Yoshitaka Arita Architect Office

石垣島の住宅

House in Ishigaki-Island | 沖縄県石垣市
  • ©Atsushi Tamura
  • ©Atsushi Tamura

石垣島北東部、ビーチまで3分、坪単価5万円、広さ100坪の土地に建設した建売りの小住宅である。民泊としての運営も視野に入れ旅館業許可取得を前提とした間取りとなっている。(企画・プロデュース:株式会社WQ、担当:波多野隆司)
亜熱帯海洋性気候に建つこの住宅は、この島の独特の風土、特に強い日差し、湿度の高さ、そして強烈な台風に備える必要があった。
強い日差しには深い庇を低く構えることで対応し、屋根面の防水は石垣の直射日光と相性の悪い塗膜系は避けている。
湿度に対しては、内装仕上げに木質系材料や珪藻土など呼吸しやすい素材を選択し、床上だけでなく床下にも除湿機をビルトインすることなどで対処している。
暴風対策として、2階建てである建物を風を受け流す1階建てのような構えとし、これを重いコンクリートで作った。ガラス面の広い窓の外側には島内で多用されているアルミ製の防風戸を設置した。そのつど脱着して使う防風ネットよりも運用が簡便で信頼性も高く安価なためこの防風戸を選択したが、いささか味気ない見た目のこの暴風戸は木製の戸袋で覆い、外観を整えている。
低く構えた寄棟屋根は昔の島の住宅によく見られた形態であり、アルミ製防風戸は現代の島の住宅によく用いられる製品である。限られた予算の中で激しい気候に対処しようとすると、自ずとその土地でよく用いられる形態・製品に帰着するが、今回の計画ではそういったものの使い方を再考する事でこの住宅らしい佇まいを作り出すことを試みた。
外観のシンプルさとは対照的に、内部は螺旋状に折り畳まれた階段状の床で構成されている。
この床は、2回の打設で作られたモノコック状のコンクリートの外郭に対して木造フレームで挿入した。柱のない寄棟天井の下、少しずつ高さのズレた小さな床が隣り合い繋がっており、ズレはその高さに応じて腰掛ける場所や掘りごたつ式テーブル、カウンター、そして部屋となって16.5坪の小さな住宅の中にいろいろな居場所と関係を作り出している。窓にハミ出した段差の断面やその奥に見える階段が、外からこの建物を見る人にも内部の以外な展開を知らせている。
住み手の家族構成が未定であり、民泊として2〜6人が短期間滞在することも想定されるこの計画では、段差の多い不便さと引き換えに、変化のある構成を体験する楽しさを選択した。
雨端(あまはじ)の軒下ベンチは、この土地の風土をゆっくりと感じ取るための設えである。